余一氏のお部屋の片隅。
サカモトちゃんが撮影した余一氏の写真の隣りに、
なにやら怪しい段ボールがあります。
段ボールの中には、白い楕円形の物体と蛾の死骸が。
映画「エイリアン」のワンシーンを連想させます。
まだ生きている蛾も。
羽は、体に対して小さすぎて飛べないようです。
そして白い物体の周りには黒い粒が付着してます。
卵だね。
と余一氏。
よくよく見てみるとスゴい数です。
何の卵でしょうか。
蚕(かいこ)です。
こないだ繭(まゆ)を数個頂いてね。
育てることにしたんだ。
蚕は古代から人と共に生きてきた虫。
今では退化してしまって羽化しても羽も大きくならない。
つまり飛べない、逃げない。
人がいないと生きていけないんだ。
蛾の状態になるのは蛾の一生では最後の一瞬。
イモムシの状態が長いんだけど、
その間に何度か脱皮を繰り返して、
繭を作り、その中でサナギになる。
この繭が絹糸になるんだよね。
羽化したあとはスグに近くの異性と交尾の末、
産卵、その一生を終えるんだ。
今、この段ボールの中にあるのはその最後の残骸。
クライマックスです。
俺、泣きそうになっちまったよ。
これからこの卵を大事に孵化させて育てていくよ。
と余一氏はこの蛾、
いや蚕についてしみじみ語っていました。
蚕はその昔、「こ」と呼ばれていたそうですが、
人が飼うようになり「かいこ」となったそうです。
または神が生んだ虫ということで「かみこ」、
それがなまって「かいこ」となった説も。
神様の虫って考えると、すごい神秘的だよね。
ツブラな真っ黒い目をしてて、羽も小さいからカワイイ。
まるで天使のようにも見える。
孵化する前には卵が青くなるらしい。
それも是非見たいね。
しかし、蛾ですよ、蛾。
そして段ボールの中はその天使の死骸でいっぱいですよ。
…キモイ趣味が増えました。